「パパ、もう歩けない」
7歳の娘がそう言ったのは、アジア園からアフリカ園へ向かう坂道の途中だった。5月の陽気、じわっと汗ばむ気温。私はその場で娘を肩車して、急勾配をえっちらおっちら登った。
多摩動物公園は、広い。そして、坂がきつい。これは来る前に覚悟しておいたほうがいい。でも同時に、その坂を越えた先には、他の動物園では絶対に味わえない体験が待っている。ライオンに囲まれたバスの中で娘が見せた顔を、たぶんしばらく忘れない。
まず開園と同時にライオンバスのチケットへ走る
多摩動物公園を子連れで攻略するうえで、最初にやるべきことはひとつだ。開園と同時にライオンバスステーションへ直行して、乗車時間を指定したチケットを買う。これが、この日の全スケジュールの起点になる。
ライオンバスは時間指定制で、人気の時間帯はあっという間に埋まる。5月の週末ともなれば、のんびり動物を見てからチケット売り場に向かうと、希望の時間が取れないことも十分ありえる。まず買う。そこから逆算して園内を回る。これが正解だ。
ちなみにライオンバスステーションは正門から徒歩15分ほどの場所にある。入園したらすぐ動くこと。「後でいいか」はNG。
料金は大人500円、子ども(3歳〜中学生)150円。入園料(大人600円、小学生以下無料)とは別途かかるが、この体験に650円は正直安いと思う。
ライオンバスの中で、娘が固まった
バスが放飼場に入った瞬間、窓の外にライオンが現れた。
柵もない。ガラスもない(正確には強化ガラスはあるが、ほぼ「いない」感覚)。ライオンがバスのすぐそこを悠然と歩いている。娘は最初の10秒ほど、完全に固まっていた。声も出ない。ただ窓に顔をくっつけて、息を止めているみたいにじっと見ていた。
1964年に世界初の「サファリ形式」として運行を開始したというライオンバス。60年以上の歴史がある乗り物に乗っているという事実よりも、ただ目の前のライオンに圧倒されていた。所要時間は10〜15分ほどだが、体感は倍以上に感じる密度だった。
ライオンバスに乗るためだけに来ても、全然いい。それくらいの体験だと思う。
オランウータンが、なぜか一番「刺さった」
娘がライオンバスの次に食いついたのは、意外にもオランウータンだった。
多摩動物公園のオランウータンといえば「スカイウォーク」が有名で、高い塔の間に張られたロープを、オランウータンが自分で渡っていく。檻の中ではなく、頭上の空を移動する姿は、見ている側が思わず首を上げてしまう迫力だ。「かわいい」と言いながらも、目が離せない。
動きがゆっくりで、表情が豊かで、なんとなく「人っぽい」のがいいのかもしれない。ライオンの圧倒感とは違う、じんわりした面白さがある。
正直に言う。坂は、きつい
多摩動物公園は多摩丘陵の地形をそのまま使っているので、園内はアップダウンの連続だ。特にアジア園とアフリカ園のあいだの坂が長くて急で、子連れにはなかなかしんどい。
この日私が実際にやった対策を正直に書いておく。
ひとつは肩車。7歳でも疲れてくると「もう無理」になる。そうなったら即肩車して乗り越えた。ふたつめはグリコ作戦。「あの木まで歩いたら3歩ジャンプしていい」みたいなノリで、自力で歩かせる距離を少しずつ稼いだ。古典的だが、効く。
ベビーカーは坂が多いため、かなり大変だと思う。小さい子連れの場合は抱っこ紐か、途中で無料のシャトルバスを活用するのが現実的だ。大人もそれなりに体力を使うので、飲み物は多めに持参したほうがいい。
昆虫生態園が、想像の5倍すごかった
正直に言うと、昆虫生態園は「一応行っておくか」くらいの気持ちで入った。出てきたときには「これ、メインじゃないか」と思っていた。
温室の中に入った瞬間、蝶がいる。いる、というよりも、いすぎる。南国の大型の蝶が、視界のあちこちをひらひらと飛んでいる。足元にも、頭の上にも、目の前にも。「多い」という言葉が追いつかない量だった。
温室内は少し暑め。でもその蒸し暑さがむしろ「南国の森の中にいる」感覚を強めていて、不思議と嫌ではなかった。蝶が肩や腕に止まることもある。娘はしばらく動かずに、止まった蝶をじっと見ていた。
この昆虫生態園、入園料に含まれていて追加料金なし。動物園に来てこんな体験ができるとは思っていなかった。穴場中の穴場だと思う。5月という季節も、蝶の活動が活発で最高のタイミングだったかもしれない。

帰りは「みんみん」で焼肉。これで完璧だった
多摩動物公園でフルに動いたあとは、正直かなり腹が減る。帰り道に立ち寄ったのが焼肉「みんみん」。コスパのいい焼肉屋で、たっぷり歩いたあとの肉はそれだけで最高だった。
多摩動物公園の最寄り駅「多摩動物公園駅」周辺はそこまで飲食店が多くないので、行き帰りのルートで食事場所をあらかじめ決めておくのがおすすめ。お腹を空かせた子連れで当日に探すのは地味につらい。
まとめ ―― 多摩動物公園は「ライオンバスファースト」で攻略する
多摩動物公園を子連れで楽しむための結論は、シンプルだ。
開園と同時にライオンバスのチケットを買いに行き、乗車時間から逆算して園内を回る。坂はきついので飲み物と肩車の覚悟を持っていく。昆虫生態園は絶対に寄る。これだけで、かなり充実した一日になる。
動物を「檻越しに見る」のではなく、スカイウォークするオランウータンを見上げたり、ライオンに囲まれたバスに乗ったりできる動物園は、なかなかない。大人600円・子ども無料という入園料を考えると、東京の動物園の中でも相当コスパが高いと思う。
肩車で坂を登りながら、娘が「またライオンバス乗りたい」と言っていた。次は体力温存して来よう、と心の中で思った。
おでかけメモ
- 施設名:多摩動物公園(東京都日野市)
- 入園料:大人600円/中学生200円/小学生以下・都内在住在学の中学生 無料
- ライオンバス:大人500円/子ども(3歳〜中学生)150円・入園料とは別途
- 昆虫生態園:入園料に含まれる(追加料金なし)
- 休園日:水曜日(祝日の場合は翌日)
- アクセス:京王線・多摩都市モノレール「多摩動物公園駅」徒歩1分
- 公式サイト:多摩動物公園公式サイト
- ライオンバス詳細・オンライン予約:ライオンバス公式ページ
- 入園料・開園時間:開園時間・料金案内
※料金・営業情報は変更される場合があります。お出かけ前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
